今日午前、予想をしていなかったアメリカによるシリアへのミサイル攻撃が行われました。
米中首脳会談のまさにその最中に行われたアメリカのシリア攻撃。
その是非については論じるつもりはありませんが、トランプ大統領の手腕を見ていると、いろいろなことを感じました。
ビジネスマン感覚のトランプ大統領
そもそもトランプ大統領はシリアへの攻撃には積極的ではありませんでした。
就任前には、ISに対抗するためにはシリアのアサド政権との連携の必要性もあるという認識で、そのためにもロシアとの関係改善にも前向きな発言を繰り返していました。
しかし今月に入って事態は大きく変わります。
4日にアサド政権が反政府勢力の支配地域に化学兵器を用いたとのニュースが入ります。
これを受け、トランプ大統領はアサド政権を非難。
そして今朝の攻撃となった次第です。
攻撃のニュースを見て、私はトランプ大統領はやはりビジネスマンだなと思いました。
これまでの政権では化学兵器が使用されても、事実確認に時間をかけ、その上で対応を協議し、結論を出すというやり方でした。
証拠集めをし、その上でどうするかを決めるこの手法はとても時間がかかります。
検証に時間がかかり、対応が決定したタイミングでは、人々の記憶から凄惨な事件の記憶が薄らいだ時に制裁を下しても、有権者の心を掴むことはできません。
今回は、発生後わずか2日でミサイル攻撃という目に見える形で、最もインパクトのある手段を人々の前に提示しました。
このスピード感は、ビジネスマンの感覚です。
世の中の注目が最も集まっているタイミングに、支持を受けやすい対応をすると、普段の何十倍もの印象を人々に与えることができます。
ここらへんの嗅覚はさすがにビジネスで鍛えられてきた人だなと感じました。
100点満点の回答を出すのではなく、とりあえず及第点の回答を、スピーディに出す。
スピードがあれば、対応にちょっとした不備があったとしても、早さという要素が価値となり、トータルの評価は高くなる傾向があります。
今回はそのビジネスの手法を用いて、低迷する政権支持率に対するアピールとなったのではないでしょうか。
安倍首相から学んだ緊急時における対応
2月に行われた日米首脳会談において、印象的なシーンがありました。
北朝鮮が首脳会談の最中に、ミサイルを日本海に発射した件について、日米両首脳が共同で非難声明を出したことです。
この記者会見は、姿こそ二人並んでその場にいましたが、非難声明の主導権を握っていたのは、素人目に見ても安倍首相でした。
トランプ大統領はこれまでにビジネスの舞台で数々の修羅場をくぐってきたことでしょう。
しかし、ミサイルが飛んでくるような事態はおそらく経験したことがなく、2月の時には、安倍首相の横で、借りてきた猫のようにおとなしく立っているでした。
この時、トランプ大統領は人は予想もしていなかった事態に直面すると、頭が真っ白になり、適切な対応を取ることが困難になると学んだことでしょう。
また、そういった状況におかれていると、冷静な相手が提示してきた要求には乗ってしまうことを痛感したはずです。
人は想定外の事態に追い込まれると、自分の思考では適切な対応を取ることができず、冷静に取り仕切ってくれる相手の判断に物事を委ね、その指示に従うことが多くなることがあります。
北朝鮮のミサイルについて、トランプ大統領はまさにその事態に陥り、安倍首相が主導権を握っていました。
今回、その時の手法をアレンジして、シリア攻撃でいきなり習近平国家主席の冷静な判断力を奪い、交渉を有利に運ぼうと考えたのではないでしょうか。
自分が身をもって感じた手法。
日本にはしてやられたが、それは安倍首相が自分よりも何枚も上手だったと呑み込んだうえで、その優れた手法を用いて、今度は自分が有利なように場の雰囲気を作ろうとしてシリア攻撃に至ったのではないかと個人的には関しました。
実際、攻撃後に習金平主席の会見をしていません。
不意を突いて、習主席が用意していたプランをぶっ潰し、自分の要求(北朝鮮絡み?)を相手に呑ませたのではないでしょうか?
これまでビジネスの世界では成功を上げてきたトランプ氏。
政治という慣れない舞台においても、たとえ過去に自分がしてやられた習慣でもよいと思えば取り入れる。
そんな貪欲さが、トランプ大統領がビジネスの世界で成功してきた強みなのかなと感じました。