【将棋】羽生善治さんが達成した永世七冠の凄さ

将棋の羽生善治棋聖が、竜王戦第30期七番勝負を4勝1敗で渡辺明竜王を制し、2002年以来、15年振りに竜王位を獲得しました。

今回で竜王位は通算7期となり、永世竜王の称号を獲得。

これまで羽生さんは、他の6つのタイトルで永世位を獲得しており、今回の永世竜王獲得で、現在永世位の規定があるすべてのタイトルでの永世称号を獲得。

「永世七冠」という快挙を達成しました。

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永世称号獲得の難しさ

将棋には現在8つのタイトルがあり、2017年にタイトル戦になった叡王は永世位の規定がないためひとまず除外し、他の7タイトルの条件について見ていきます。

なお、かっこ囲みの数字は羽生さんの記録(連続は最多のもの)です。

  • 竜王 連続5期または通算7期(2期連続、通算7期)
  • 名人 通算5期(3期連続、通算9期)
  • 王位 連続5期または通算10期(9期連続、通算18期)
  • 王座 連続5期または通算10期(19期連続、通算24期)
  • 棋王 連続5期(12期連続、通算13期)
  • 王将 通算10期(6期連続、通算12期)
  • 棋聖 通算5期(10期連続、通算16期)

通算タイトル獲得期99期

もはや何と言っていいのか分からないくらい凄い成績です。

最もハードルが高いと考えられるのは連続5期が条件の棋王

他のタイトルは通算期数での永世称号獲得の目がありますが、棋王だけはとにかく5連覇しなければならないので、ハードルがとても高いのです。

また、仮にすべてのタイトルを最小の獲得数でクリアするにしても、トータルで40期の勝利が必要なのです。

今回獲得した竜王位は、2008年に第1局から渡辺明竜王(当時4期連続)に3連勝し、あと1勝まで迫っていながら4連敗し、また2010年にも挑戦するも2勝4敗(対渡辺明竜王)で達成できなかった、いわば「忘れ物」でした。

今年は予選から竜王戦にかける意気込みは並々ならぬものがあったように感じました。

そして3度目の挑戦でついに永世資格を得る通算7度目の竜王を達成したのです。

なお、タイトル戦ではないのですが、テレビで中継されているNHK杯というトーナメントがあり、こちらも通算10回以上の優勝(これも年1回のトーナメント)で名誉NHK杯選手権者の称号が得られます。

これについても羽生さんは獲得しています。

1つのタイトルを獲得する難しさ

各タイトルは年に一度、タイトル戦が行われます。

前年のタイトルホルダーはタイトル戦のみ戦いますが、挑戦者は予選を勝ち抜いていかなければなりません。

160人以上いる棋士の中で勝ち抜いた者が挑戦者になれるわけです。

しかも予選は実力が近い者同士で対局が組まれるので、勝ち抜くのも一苦労なわけです。

例えば今回の竜王戦、羽生さんは予選で4試合、本戦トーナメントで挑戦者決定三番勝負を合わせて5試合戦っています。

それを勝ち抜いて(予選の決勝は負けて1組2位で本戦出場、三番勝負は2勝1敗)竜王への挑戦権を獲得しました。

また、同時進行で他のタイトル戦もあります。

今年、中村太地六段が王座を獲得しましたが、タイトル戦前には1日15時間もの対策研究を2カ月も行っていたことをインタビューで語っていらっしゃいました。

プロ、とはいえ、そこまでやらなければタイトルを獲れないということに、勝負の厳しさと、その世界で30年近くトップを走り続ける羽生さんの凄さが改めて分かりました。

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中村太地王座

タイトルを獲り続けることの凄さ

去年タイトルを3つ獲得していた羽生さんでしたが、今年はそのうち2つのタイトル(王位、王座)を失いました。

なお、一冠になるのは実に13年振りとのこと。

しかし、今回竜王を獲得したことで、再び複数タイトルホルダーに。

ちなみに棋士は紹介される時、名前+段位または保有タイトル名で呼ばれるのですが、羽生さんが最後に段位の肩書で呼ばれたのは最初の竜王挑戦時(1989年)の「六段」です。(1990年の竜王戦で敗れ無冠になるも、1年間は前竜王の称号で呼ばれる。その後、棋王を獲得し、以降タイトルが途切れていない。また、第2期叡王戦羽生善治九段と呼ばれたが、これはタイトル保持者でも段位で呼ぶという規定のため)

これまで通算99期のタイトルを獲得している羽生さん。

1989年の竜王位獲得以来28年間、単純平均で年3.5個のタイトルを獲っています。

1996年2月にはすべてのタイトルを独占し、7冠となったことはよく知られています。

将棋は年に7つのタイトルがあります。

羽生さんがタイトルを獲得した1989年を基準にして、過去29年間(1989年~2017年)で209人(1994年まで棋聖が前期・後期の年2回)のタイトルホルダーがいるのですが、その内99人は羽生さんなのです。

つまり、ほぼ半分が羽生さん。

もはや凄すぎて何と言ってよいのか分からない(笑)

 

なお、歴代タイトル獲得記録は次の通り。

この記録を見ても、羽生さんの凄さが伝わってきます。

なお、大山康晴十五世名人(永世)・永世十段(現竜王)・永世王位・永世棋聖永世王将(永世五冠)は、1962年、当時の5つのタイトルを独占する五冠独占(名人・十段・王将・王位・棋聖)を達成しています。

ひふみんが初めてタイトルを獲得した十段(1968年)は大山康晴十五世名人から奪取したものです。

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大山康晴十五世名人

今後は?

今後も羽生さんはまだまだ第一線で活躍を続けられることでしょう。

今年は本戦に進めなかった新しいタイトル叡王戦(予選の決勝で敗退)でも、ぜひタイトルを獲得する姿を見たいですが、ファンとしてはやはり藤井聡太四段との公式戦での対局を実現してほしいと思います。

また、あと1期で通算タイトル100期となるので、こちらも達成していただければと思います。

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