普段の生活で使う水は結構な量になる。
東京都の平均で、1人当たりの水の使用量は
- 洗濯 33リットル/日
- 炊事 40リットル/日
- トイレ 46リットル/日
- シャワー(5分) 60リットル/日
4人家族だと880リットル/日の量を使っているとのこと。
今回はこれまでにない発想で、水を再利用する試みを特集していた。
洗剤を使わずに洗濯ができる「洗たくマグちゃん」
毎日の洗濯で発生する排水を有効活用できないかという取り組みで紹介されていた茨城県の宮本製作所。
元々は金属加工の下請け会社で、部品加工の際に大量のマグネシウムの削りかすが発生していた。
このマグネシウムを家庭用で使っている物に利用できないかを考えた末に、洗濯用商品の開発にたどり着いた。
洗剤を使わずに洗濯ができるというもので、純度99.95%のマグネシウムを粒状に加工し、ネットに詰めたもの。
これ1つで、300回ほど使えるという。
原理としては、マグネシウムを水につけると、化学反応で水がアルカリ性になり、その水が油に反応し、分離せずに混ざるとのこと。それによって衣類に付いた人の脂に反応し、汚れが浮かして、落とすということらしい。
ただ、マグネシウムは常温の水には反応しないはず(高校の化学)だから、おそらく粒状にマグネシウムが、洗濯水流の中でこすれあって、水に溶けやすくなるのではないかと、個人的には思う。
また、除菌効果もあるようで、大腸菌での実験結果を表示していたが、かなりの効果がある模様。
この除菌効果が、消臭効果をもたらすとのことで、洗剤を使わずに汚れと臭いを落とすことができるという。
2013年の発売以来100万個以上を売り上げたヒット商品になった。
洗濯排水で作る野菜
「洗たくマグちゃん」で洗うと洗剤が不要なので、排水を農業に使うという取り組みも紹介されていた。
衣類の汚れは皮脂汚れが主で、それをマグネシウムだけで洗濯すると、窒素、リン、カリウムが含まれた排水になる。
これらは野菜を育てる肥料にも含まれている成分で、つまりその水を使うと、肥料の代わりになるわけである。
農家としても、肥料代の節約になる。
この洗濯排水は思わぬ副産物を生んだ。
通常の水で育てた作物は、虫に食われていたが、「洗たくマグちゃん」の排水で育てた野菜は虫に食われずに育った。
虫よけの効果があったわけである。
また、洗濯排水だけで育てた作物(オクラ)は、通常の栽培法で育てたものと、リンやカルシウムの数値がほぼ変わらないができた。
肥料を使わず、同等のものができたわけである。
味に関しても百貨店で試験販売をした際に上々の評価を受けている。
洗濯排水で育てた作物と聞くと、マイナスイメージを抱く人もいるが、よくよく考えると、有機農法と同じものだと個人的には思う。
消費者が正しい理解を持てば、可能性のある取り組みだと感じた。
人工知能を使った効率的水運用システム
もうひとつ、興味深い取り組みをしている会社が紹介されていた。
AIを活用した水処理技術に取り組んでいるWOTAという会社である。
サッカーの本田圭祐選手がtwitterでも取り上げていた会社(社名は出さず)で、効率的な水の活用に取り組んでいる。
今回紹介されていたのは、シャワー技術で、水道に繋がず、30リットルのタンクに入れた水で、100回ほどシャワーが使えるというものだった。
これは、一度流した水をフィルターで汚れを除去して再利用するというもので、コーヒーをろ過すると、真水になるほどのろ過力がある。
この会社ウリは、センサー技術で、回収した水がどういった水質なのかを分析し、フィルターがどういう状態なのかを人工知能で計算して、もっとも効率的なろ過をするというものである。
通常の装置だと、すべてのフィルターを通して浄化するが、このシステムでは、AIで通すフィルターを判断して、不要なろ過を行わずに水を浄化するとのこと。
つまり、フィルターの寿命も伸びるというわけである。
仮にろ過できないほど汚い水が入ってきたら、そのまま捨てるという。
この会社は、最終的に各家庭で水を自給自足できるようなシステムを構築したいと考えているという。
雨水を再利用して、生活用水を確保するということであろう。
この技術は災害時に大きな威力を発揮する。
水道インフラが被害を受けた際に、少ない水でたくさんの水需要を賄える。
7月の西日本豪雨の際、真備町にこのシステムを持ち込み、避難所でシャワーを提供した。
利用者は3日間で100人以上。
このシステムが広まれば、災害時に避難者の役に立てることだろう。
今回の運用で問題点も浮き彫りになり、1台あたり70kg以上の重量では、取り回しが不便であることから、軽量化に取り組んでいた。
そして8月上旬には、重さ19kgにまで軽量化に成功。
浄化能力も水道水よりもキレイになるほどの性能を維持していた。
これにより、1人での運搬が可能になり、飛行機への持ち込みもできるので、災害時に迅速な支援が可能になったようである。
なお、このシステムは、キャンプでの利用も考慮されていて、レジャー需要を喚起できれば、より普及しやすくなり、災害時の備えとして各家庭に広まる可能性がある。
まとめ
7月の西日本豪雨、今月に入ってからの近畿地方大停電、北海道地震と、災害被害が相次いでいる。
WOTA社の取り組みは、今後も起こるであろう大規模災害で、被災者支援に大きな役割を果たせるものであると思う。
また、洗濯排水の利用についても、近年、夏場の渇水が各地で取り沙汰されることからも、限られた水資源を無駄なく利用する取り組みとして、広まっていってほしいものだと感じた。