史上最年少で四段になり、歴代最多の29連勝を達成し、記録を塗り替え続ける藤井聡太四段。
もはや将棋界の記録をすべて塗り替えても驚かないというか、むしろ塗り替えてほしいと思いますが、藤井四段をしても塗り替えることができない記録があります。
それは先日、現役を引退した加藤一二三九段が持つある記録。
将棋界のレジェンドの持つその記録とは?
「神武以来の天才」の異名は伊達じゃない
藤井四段が最年少で四段昇格を果たすまで、加藤九段がその記録を62年の長きに渡り保持してきました。
加藤九段が四段に昇段したのは14歳7か月、プロ入りは1954年8月1日付でした。
プロになると順位戦のクラスはC級2組に在籍することになります。
1年をかけて各クラスの棋士で対局を行い、成績上位の者が上のクラスに昇級するシステムです。
加藤九段はプロになった翌1955年4月1日にC級1組に。
さらに翌1956年4月1日にB級2組、翌1957年4月1日にB級1組に昇級。
そして1958年4月1日にトップクラスであるA級に昇級します。
つまり四段になってから四期連続で昇級し、A級に昇りつめたのです。
この時、ひふみんは18歳3か月。
これは史上最年少記録で、現在に至るまで破られていません。
この快挙をして「神武以来(このかた)の天才」の異名を冠することになったのです。
藤井四段のA級昇級は最短で2021年
このA級昇級最年少記録、藤井四段が破ることは不可能な記録なのです。
えっ?だって藤井四段は史上最年少でプロになったんでしょう?
それなのになんで??
2017年6月末現在、藤井四段が在籍するクラスはC級2組です。
仮にひふみん同様、四期連続で昇級したとしても、2018年4月1日にC級1組、2019年4月1日にB級2組、2020年4月1日にB級1組に昇級。
そしてA級に到達するのは2021年4月1日。
藤井四段は2002年7月19日生まれですので、18歳8か月となります。
ひふみんに遅れることわずか5か月。
しかし、この5か月が埋められない時間なのです。
昇級は年度変わりの4月1日付。
しかも順番に上がっていくしかないので、どんなに成績がよくても、これ以上早くはなりません。
ちなみにひふみんの初年度の記録は11勝1敗。
当時、C級2組は東西2つに分かれていて、それぞれトップが昇級するという条件でした。ひふみんは西の7人中、下から2番目という不利な位置でした。
その中でブッチギリのトップ(西の2位は7勝5敗)。しかも東の10人を含めてもトップでした(東のトップ9勝3敗)。
新四段の中学生でこの成績とは、後に神武以来の天才と言われるのもわかります。
すべての記録を更新できなくとも…
他にも加藤一二三九段の持つ記録は数多くあります。
- 最年少名人戦挑戦(20歳)
- 最年少A級陥落(21歳)
- 最年少A級返り咲き(22歳)
- A級最多対局記録(313局)
- A級最多勝利記録(149勝)
- A級最多昇級、降格記録(5回)
- 順位戦最多出場(62期)
- 最多対局数(2505局)
- 最多敗戦数(1180敗)
藤井四段一人でこれらの記録すべて更新することはまず不可能でしょう。
しかし、たとえすべての記録を更新できなくとも、藤井四段の凄さは寸毫たりとも褪せることはありません。
ただ、藤井四段が塗り替えることができなかったかつての記録が、藤井四段という物差しによって、その偉大さが再認識されるという意味で、藤井四段が更新できないことの意味があると思います。
もうこの記録を破るためには、史上初の小学生プロ棋士の誕生を待つくらいしかないのかもしれない(笑)