七段昇段の藤井聡太棋士、八段への道

将棋の藤井聡太六段が、竜王戦5組ランキング戦準決勝で勝利し、七段に昇段。

これまで加藤一二三九段の最年少記録、17歳3カ月を大きく上回る15歳9カ月での七段昇段となりました。

 

もはや異次元のスピード出世を邁進する藤井七段。

さて、次の八段にはいったいいつ昇段するのでしょうか?

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将棋の昇段規定の話

2016年に史上最年少、14歳2ヵ月でプロ(四段)になった藤井聡太棋士は、プロになってわずか1年7ヵ月で七段に昇段しました。

師匠の杉本昌隆棋士が1990年にプロ入りし、現在棋士生活27年7ヵ月で七段ということからも、その昇段スピードの速さが際立ちます。

ってか、師匠、弟子に並ばれちゃったよ(笑)

 

将棋の段位は決められた規定をクリアすると上がっていきます。

五段から七段までの昇段条件は以下の通りとなっています。

藤井七段は赤色部分をクリアして昇段しました。

 

五段

  • 竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝
  • 順位戦C級1組昇級
  • タイトル挑戦
  • 棋士参加棋戦優勝
  • 公式戦100勝

六段

  • 竜王戦2組昇級
  • 五段昇段後竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝
  • 順位戦B級2組昇級
  • 五段昇段後タイトル挑戦
  • 五段昇段後全棋士参加棋戦優勝
  • 五段昇段後公式戦120勝

七段

  • 竜王挑戦
  • 竜王戦1組昇級
  • 六段昇段後竜王ランキング戦連続昇級または通算3回優勝
  • 順位戦B級1組昇級
  • タイトル1期獲得
  • 六段昇段後全棋士参加棋戦優勝
  • 六段昇段後公式戦150勝

竜王ランキング戦優勝による昇段については、昇段前の優勝も昇段の条件になる。(例・五段時に4組で昇級し、その年に勝星もしくは順位戦で六段に昇段し、次の年に3組で昇級した場合は七段昇段)また、連続2回昇級における昇段については、降級直後の連続昇級は除外する。


日本将棋連盟HP昇段規定より)

 
藤井七段は、まず2月1日、順位戦C級2組9回戦で「順位戦C級1組昇級」を決め、五段に昇段しました。

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そして2月17日に行われた朝日杯将棋オープン戦で優勝し、「五段昇段後全棋士参加棋戦優勝」の規定をクリアして六段に昇段。

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さらに今回、「六段昇段後竜王ランキング戦連続昇級または通算3回優勝」の連続昇級の規定により七段に昇段しました。

 

五段から六段へはわずか16日、そして六段から七段へも90日という超短期間での昇段となりました。

運にも恵まれた昇段

今回の藤井七段誕生は、運にも恵まれたものでした。

2月1日の順位戦9回戦で五段になれたことが非常に大きかったのです。

 

C級2組の順位戦は年間で10戦対局し、成績上位者3名がC級1組へ昇級します。

順位戦の昇級争いは最終戦までもつれることが多く、今回、9回戦の時点で昇級が決まったことは、藤井四段(当時)が全局勝利していたことと、同組の他の棋士の成績との兼ね合いで、最終戦を待たずに上位3名以内が確定しました。

 

もし最終戦までもつれていたら、朝日杯将棋オープン戦で「全棋士参加棋戦優勝」の規定により五段に昇段し、順位戦で昇級しても段位は五段のままでした。

順位戦での六段昇段は、「B級2組への昇級」が条件ですので、C級1組昇級では条件を満たせません。

そうなると、竜王戦の連続2回昇級をクリアしても六段どまりだったのです。

 

昨年29連勝をしていた際に「順位戦で勝利することが大切」と語っていた藤井七段。

まさに、その順位戦で勝利し続けたことで、9回戦での昇級という運を手繰り寄せたともいえるのではないでしょうか。

新人王戦などの参加資格を失う最年少棋士

今回のスピード出世の影響で、思わぬ弊害が出ています。

プロ入り2年未満でなおかつ最年少棋士である藤井七段が参加資格を失う棋戦があるのです。

 

加古川青流戦、YAMADAチャレンジ杯、新人王戦の3つの棋戦です。

参加条件が以下の通り。

加古川青流戦

日本将棋連盟所属の棋士四段位奨励会三段位上位者、女流棋士2名、 アマチュア3名によるトーナメント戦

YAMADAチャレンジ杯

出場条件

五段以下でプロ入り15年未満の棋士(タイトル戦未出場)、アマチュア選抜1名

新人王戦

参加定員・資格

1. 26歳以下(10月1日現在)
2. 六段以下(タイトル戦経験者は除く)
3. 成績選抜の女流枠(ただし、26歳以下)4名
4. 赤旗名人戦優勝者(赤旗名人)
5. 前期三段リーグ成績上位者(※定員40名から前述の1~4の合計人数を引いた人数が参加)


日本将棋連盟HP棋戦一覧の各棋戦概要より)

 
まず加古川清流戦は五段になった時点で、次にYAMADAチャレンジ杯は六段昇段時、そして今回の七段昇段で新人王戦の参加資格も失いました。

 

そもそもこれらの棋戦は、若手棋士への対局機会拡充のために設けられたもの。

それなのに現在、プロで最も若い藤井七段が締め出されるという、想定外の事態に陥っています。

まあ、一般棋戦でも本戦に残ったりするほどの実力者なので、対局機会は充分に確保できているようですが。

 

これらの棋戦に藤井七段は2017年度に参加して、加古川清流戦とYAMADAチャレンジ杯は優勝はできませんでした。

2017年度の新人王戦は現在も勝ち残って進行中ですが、もし今回優勝できないと、若手棋戦での優勝がないままとなります。

新人王戦は羽生竜王や佐藤名人、菅井王位、渡辺棋王といった現タイトルホルダーの皆さんが獲得している棋戦です。

次なる目標八段への条件は?

さて、七段の次の八段になるのはいつなのか?についてですが、昇段規定は次の通りです。

八段

日本将棋連盟HP昇段規定より)

 


まず「順位戦A級昇級」ですが、これは最短でも2021年の3月頃になります。

なお、A級昇級最年少記録は、加藤一二三九段の記録を藤井七段は更新することはできません。

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次に「七段昇段後公式戦190勝」ですが、藤井七段の2017年度の成績は「61勝12敗」でした。

年間60勝をあげても3年以上かかってしまいます。

しかし、藤井七段は若手棋戦への出場資格を失いましたので、今年は昨年より対局数が大幅に減るものと思われるので、190勝にはおそらく4~5年かかるのではないでしょうか。

 

そしてもうひとつの規定「竜王位1期獲得」です。

藤井七段は現在竜王戦5組ランキング戦決勝に残っています。

ここを勝ち抜き、さらに決勝トーナメントも勝ち抜き、七番勝負で勝てば竜王位獲得。

晴れて史上最年少八段と史上最年少タイトルの記録を打ち立てます。

(例年11月下旬に決着するので16歳4ヵ月)

 

いうまでもないことですが、本戦トーナメントを勝ち抜くことは容易ではありません。

佐藤会長、久保王将、広瀬八段という錚々たるメンバーを破り、さらには反対の山を勝ち上がってくる猛者との三番勝負。

しかも、仮にタイトル挑戦にこぎつけても、相手はあの羽生竜王

そう、最強の王者が、番勝負で待ち構えているのです。

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先の朝日杯将棋オープン戦では藤井七段(当時五段)が羽生竜王を破りましたが、持ち時間が長く、しかも長期間にわたるタイトル戦となると、100回以上経験している羽生竜王が相手では果たしてどうなるのか…。

まああくまで参考程度に、現状では今年中に八段になる可能性もまったくのゼロではない、くらいの認識でいたいと思います。

…さすがにそこまでマンガ展開はないと思う。たぶん…。

 

 

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